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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)966号 決定 1954年11月09日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人河和金作の上告趣意は、末尾添附別紙記載のとおりである。

所論は、原判決が当裁判所の判例と相反する判断をしたというのであるが、原判決は、第一審判決に量刑不当がないとして控訴を棄却したに止まり、何ら挙示の当裁判所の判例と相反する判断をしていない。また所論は第一審たる長崎地方裁判所島原支部の判決が当裁判所の判例と相反する判断をしていると論難するが、右判決は高等裁判所が第一審又は第二審としてした判決ではないから、刑訴四〇五条二号の上告理由とならないこと明らかである(第一審判決が判示第一の窃盗の事実、判示第二の窃盗及び麻薬取締法違反の所持の事実を認定し、全事実に対し併合罪の規定を適用する旨判示していることは明らかであるが、この判示だけでは判示第二の窃盗と麻薬取締法違反とを併合罪としたのか否かは必ずしも明らかでなく、仮に所論のように麻薬の窃取とその後の所持とが理論上処断上の一罪たるべきであるのにこれを併合罪とした誤があるとしたところで、本件のように結局窃盗の刑に併合加重をした範囲で処断される場合には処断刑の範囲に影響がなく、判決主文にも影響があると認められないから、刑訴四一一条の問題として取り上げるべき限りでない。)その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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